北海道の廃線跡といえば是非訪れて欲しいのがココ。
上士幌町にあるアーチ橋、タウシュベツ川橋梁。
今は無き、国鉄士幌線のコンクリートアーチ橋梁群の中でも格別な美しさを持つ北海道の遺産だ。
■幻の橋・タウシュベツ川橋梁とは
「タウシュベツ」とはアイヌ語で「樺の木が多い川」という意味。
昭和14年に士幌線が十勝三股駅まで開通した際、音更川(おとふけがわ)の支流に架けられたアーチ橋だが、昭和30年に発電用ダムの糠平湖が建造され、僅か16年で水没してしまった。
だがダムの水位が下がる季節のみ再びその姿を現すことから「幻の橋」と呼ばれ、古代ローマ遺跡を髣髴とさせるその優美なデザインに魅了される人も数多い。
ダム建設に伴い糠平湖を避ける新線が用意された為、橋梁上やその周囲の線路は撤去されてしまったが、大自然の中に今尚悠然と立つ姿はまさに孤高と呼ぶにふさわしいだろう。
■第1回北海道遺産に認定
幻のめがね橋
タウシュベツ川橋梁の美しさは自然の力だけでは語れない。
毎年6月頃からダムに水が溜まり始め秋頃には完全に水没してしまうのだが、よく晴れた風の穏やかな日にはアーチが湖面に鮮やかに映りこむ「めがね橋」が見られる。
このめがね橋の姿は建設当初には全く想定されていなかった景観美だ。
上士幌を含む周囲の大雪山一体は、昭和9年に国立公園に指定されており、当時の建築家は自然の風景を壊さぬよう橋のデザインに配慮する必要があった。
苦心の末、自然との調和を第一に考え建造されたアーチ型の石橋は、ダム湖に沈み廃線となった後も橋建設に関わった人々の想いを汲むかのように形を変えて美しさを保っている。
自然と、人の手と。どちらが欠けても生まれなかった奇跡の遺産は、廃線ファンにはたまらない、ノスタルジックなロマンが眠っているのだ。
■しかしその余命はあと僅か - 崩壊の遺産 -
真冬のタウシュベツ
タウシュベツは失われ行く遺産としても有名だ。
その立地の悪さから保存活動が行えず、年々崩れ落ちていくのを指を咥えて見ているしかない。
秋に水没する幻の橋は、1月頃になると水位が下がり湖から再び顔を出し始める。
この時季の湖は表面が凍結している為、湖面から出てくる際は毎回氷を突き破ることになる。
その衝撃は水没中、水圧にさらされていた橋に大きなダメージを与え、今では内部の鉄骨が剥き出しになるまでに損傷してしまった。
線路跡を辿って当時の士幌線に想いを馳せたいと考えていたが、崩壊の危険がある為に橋の上は現在立入り禁止となっている。
上士幌町では寄付金の一部をタウシュベツ川橋梁を含む旧国鉄士幌線アーチ橋の保全費用に当てているが、やはり立地などの問題で難しいようだ。
特にタウシュベツは橋全体が地上にある期間が短い。
どこまでも広がる一面の銀景色の中、冷たい風の音の中に聞こえる氷の軋む音は、刻一刻と寿命を迎えるタウシュベツの声にも聞こえる。
■旧国鉄士幌線アーチ橋梁群めぐり
これまでタウシュベツについて紹介してきたが、旧国鉄士幌線には魅力的なアーチ橋が現在も多く残されている。
当時の鉄道の記録が残された資料館もあるのでアーチ橋めぐりの際は是非立ち寄ってみて欲しい。
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