総務省は、ふるさと納税による寄付を起業支援や移住促進のために使う自治体に対して特別交付税を配り、財政面で優遇するという「ふるさと起業家支援プロジェクト」をスタートさせると発表しました。詳しく解説いたします。
返礼品競争ではなく地域活性化のアイデアを競うのが目的
2018年4月スタート予定の「ふるさと起業家支援プロジェクト」は、まず各自治体が特産品販売など地域に貢献できる事業を始めたい起業家を募ります。
自治体の推薦を得られた起業家は、クラウドファンディング形式でふるさと納税の寄付金と自治体によって支援され、その自治体には国から特別交付税が配られるというシステムです。
自治体が特別交付税を受け取るためには、寄付の使い道をあらかじめ提示し、賛同者を募り、集まった寄付金に上乗せして自治体が起業家を支援する必要があります。
総務省は以前からふるさと納税の使い道を明確にするよう各自治体に通達していましたが、「産業振興」や「環境保護」など大まかな内容しか出していない自治体が多いのが実情でした。
自治体は寄付で集まった金額と同額まで補助金を出して支援でき、さらには国から特別交付税も受け取れるとあって、寄付する人の興味をひくような魅力的な起業プランにするため、自治体と起業家は共に創意工夫に知恵を絞ることになりそうですね。
ふるさと納税の使い道として自治体に選ばれた起業家は、寄付者に対してただ寄付してもらうだけの関係ではなく、その後も事業に関心を持ってもらうように継続的な事業報告や、高額にならない程度の試供品の提供、事業所見学ツアーなど返礼が必要と考えられています。
また、寄付した者を招いて交流会を開く際などの場所や移住促進のために空き家や古民家を改修したり、広報誌を送付する費用なども総務省から特別交付税とは別の予算で支援が予定されているそうです。
ふるさと納税から生まれたゲストハウス
ところで、還元率がわずかな返礼品しかない場合、または返礼品がない状態で寄付は集まるのでしょうか?
既にふるさと納税による起業支援で成功した例をご紹介しましょう。
地域おこし協力隊で高知県越知町にやってきた男性が、町の自然の豊かさを気に入り、定住したいと考えるようになりました。そこで、宿泊施設が少ないという町の課題を解決するのも兼ねてゲストハウスを作ろうと考えた彼は、山奥にある古い住宅を購入しました。
廃墟に近い状態の住宅を町の人達と協力して自力でリフォームしていきましたが、ゲストハウスのアピールポイントとして考えていた五右衛門風呂や囲炉裏を作るには資金が足りませんでした。
そこで、ふるさと納税でガバメントクラウドファンディングすることに。目標金額は300万円でした。返礼品なしで寄付金が集まるのか、と関係者の中では不安もありましたが町民をはじめ、ゲストハウスに興味がある人など全国からも応援の寄付があり、最終的に目標金額は達成されました。
もともと町には旅館が1軒しかなく、観光客が町を訪れても宿泊は近隣の町や高知市内へ流れてしまう状態で、今まで経済活性化のチャンスを逃していました。今回ゲストハウスができたことで、今まで高齢者が多かった集落に子どもたちの声が聞こえるようになるなど、良い意味で町の活性化につながっているようです。
ふるさと納税からその先へつなげるためのプロジェクト
ふるさと納税と言うと、返礼品による寄付金争奪戦のようになってしまっている現状もありますが、このふるさと起業家支援プロジェクトによって、寄付した人はその地域と深く関わりを持つようになり、興味が深くなればいずれ移住を考える人も出てくるかもしれません。
地域が活性化し、移住する人も増えればふるさと納税の本来の目的でもある地域支援の理想的な形と言えますね。
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