神事で奉納される神楽。日本古来より伝わるその舞は、現代においても神懸りの祭礼神事として行われています。
厳かでありながら艶やかな神楽の舞は、いつでもどこでも見られるものではありません。今回は神奈川県三浦市で行われている「面神楽(めんかぐら)」について、詳しくご紹介したいと思います。
漁業を中心に栄えてきた町、三浦市
神奈川県三浦市は、三浦半島の南端に位置しており、海に囲まれた地形が特徴的な市です。東に浦賀水道や金田湾、西に相模湾、そして南に太平洋と接しているため、古くから漁業を中心に栄えてきました。
特に三崎漁港は遠洋漁業の拠点とされていて、マグロの水揚げ漁港としても有名な漁港です。そのため、日曜日に開催されている三浦の朝市には、新鮮な魚介類を求めて遠方から多くの人々が訪れています。
三崎漁港
また、三浦海岸は関東地域の中でも有数の広さを持つ海水浴場であることをご存知でしょうか。夏には多くの海水浴客が訪れるのはもちろん、昔ながらの情緒ある町並みが残る町としてロケ地に使用されることが多く、観光客も年々増えています。三浦海岸から続く港町は、金田湾を望みながらのどかな風景を味わえるスポットとしておすすめです。
三浦市の南端には自然と歴史が残る観光スポット、城ヶ島があります。海鳥ウミウの生息地としても知られる城ヶ島では、自然の作り上げた造形が神秘的な馬ノ背洞門、海と富士山を望める展望台、広大な城ヶ島公園などさまざまな自然を満喫することができます。「身近なリゾート地」としてダイナミックな絶景、自然と歴史が織り成す神秘的な風景を是非楽しんでください。
神楽は、日本古来の神懸り神事
そもそも神楽とはどのようなものなのでしょうか。
神楽の語源は「神座(かむくら)」であり、神様が宿る場所を神座と呼んでいました。巫女が神座に神様を降ろすために舞った歌舞を神楽と呼ぶようになったとされていて、古くは古事記や日本書紀に登場するアメノウズメが天岩戸を開くために舞ったことが起源だと言われています。
神楽演目八岐大蛇
神楽には、宮中で行われていた「御神楽(みかぐら)」と、民間によって行われた「里神楽(さとかぐら)」があります。現代に伝わる神楽は、一般的には後者の里神楽が伝承したものだといわれています。
神楽の舞にはさまざまな演目があり、神前を清めるために行われる神事舞、日本神話をもとにした物語のある能舞など数十種類の演目が存在します。これらの演目の中からその土地の謂れや祈願に適した舞を神様への奉納として捧げ、祈願をするのが神楽なのです。
物語のある神楽は、セリフがなくてもストーリーが伝わるほどにわかりやすく、見ているだけで楽しくなるような演目がほとんどです。また、その土地ならではの演目もありますので、全国の神楽を見て回る愛好者もいるようです。
漁港の町ならではの演目も!三浦市の面神楽
神奈川県三浦市の海南神社には、面神楽という神楽が伝わっています。これは「お面をつけて神楽を舞う」ことから「面神楽(めんかぐら)」と呼ばれて親しまれているもので、演目に合わせたお面を身につけた演者が太鼓や笛の囃子とともに華麗に舞う神楽です。
面神楽は海南神社に伝わる神事で、毎年11月最初の申の日と酉の日に行われます。奉納は神社境内の神楽殿で行われ、そこには毎年多くの人々が貴重な神楽を見るために集うのです。
神楽にはセリフがなく、和楽器の音と演者の動きを以って「喜怒哀楽」を表現する神事舞です。三浦市の面神楽には25座の演目があり、その中から毎年10演目ほどが奉納されています。舞台を清める演目として知られる「国固め」で始まり、「岩戸開き」で終わるようになっていて、その間に日本神話に基づいた物語演目がいくつか演じられる流れが定番です。
恵比寿の舞の一場面(三浦市HP)
面神楽の大きな見どころは、この地にふさわしく大漁祈願を願った演目や漁の安全を願った演目が多く演じられることです。海の神様として知られる恵比寿様へ捧げる「恵比寿の舞」、誰もが知っている昔話「浦島太郎」などの演目がそれにあたります。昔からこの地域では、不漁の年には「恵比寿の舞」を漁神楽として舞って捧げて祈り、漁ができたときには礼神楽として「浦島太郎」を舞ったとされています。漁業を中心に栄えてきた土地ならではの神楽であり、今も伝承されている三浦市特有の演目だといえます。
面神楽は海南神社面神楽神楽師会によって継承され、三浦市指定重要無形民俗文化財として保存されています。何百年も昔から伝わる歴史ある神事として、三浦市の歴史を知る文化財として、そして人々が見て楽しむ宴として今もなお受け継がれているのです。
神楽の神事が残されている神社は、日本全国津々浦々にあります。それらの中から今回は、神奈川県三浦市の海南神社に伝わる「面神楽」についてご紹介をしました。三浦市を訪れる際には、神楽の奉納日に合わせてみるのも良いかもしれませんね。
※掲載内容につきましては、弊社独自の取材に基づき作成しています。
海南神社面神楽
平成30年(2018年)は
11月12日(月)・13日(火)を予定されています。