皆さんは「タイガーマスク運動」をご存知ですか。虎のマスクをかぶった英雄の名を使った寄付からはじまったふるさと納税の試みがあります。それは、子供たちを笑顔にして将来を作るための素敵な試みなのです。
「タイガーマスク運動」って何?
優れたふるさと納税の活用事例を選ぶ「ふるさとチョイスアワード2017」で、群馬県前橋市で行っている「タイガーマスク運動支援プロジェクト」が大賞を受賞しました。2017年12月にはインターネットのニュースでもタイガーマスク運動が先駆けとなった支援制度として紹介され、話題を呼びました。
ふるさとチョイスアワード2017
ふるさとチョイスアワードは、全国各地の自治体がふるさと納税を活用して行う様々な取組み、寄附金の使い道、またそれによる地域の変化の中から、地域活性につながる素晴らしい事例を厳選し、表彰するものです。
「タイガーマスク」とは、1968年から連載された名作プロレス漫画です。アニメ化もされた有名な作品です。漫画本を読んだことがなくても「名前は聞いたことがある」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
孤児として育った主人公・伊達直人は、成長して悪役覆面プロレスラーになります。施設で育つ子供たちには自分のような苦境を生きて欲しくないと願い、表の顔は虎面のプロレスラー、裏の顔は施設への援助者として生活します。しかし、施設はタイガーマスクが想像していたよりも遥かに苦しい状況に追い込まれていました。タイガーマスクは自分が所属する団体に納めるはずのお金まで寄付してしまいます。施設を助けることを選んだタイガーマスクは、団体からは悪役として睨まれながらも、子供たちに恥じない戦いをしたいと、虎のマスクをトレードマークに戦い続けるのでした。
かなり簡単ですが、これが「タイガーマスク」のストーリーです。支援事業とは繋がりますが、ふるさと納税とはまったく関係がありません。なぜ群馬県前橋市が「タイガーマスク運動支援プロジェクト」と銘打ってふるさと納税で集まった寄付による事業を行っているかというと、そこには、ふるさと納税とタイガーマスクを繋げる、ある逸話があったからなのです。
2010年、全国の児童養護施設に「伊達直人」というタイガーマスクの主人公の名でランドセルが寄付されました。寄付した人物は、前橋市に住む男性でした。この男性は幼い頃に母親と死別し、ランドセルを購入できずに手提げ袋で学校に通っていたそうです。高校時代は働きながら勉強し、日々に経済的な不安を抱えていたといいます。タイガーマスクの主人公の名で寄付をしたのは、漫画を読んで感銘を受けたからだったそうです。
「自分が苦労したからこそ子供たちのために何かしたい」
前橋市に住む男性の思いはテレビや新聞の報道で取り上げられ、多くの人の共感を呼び、やがて「タイガーマスク運動」に発展しました。
「ランドセルはいらない」と、タイガーマスク運動に疑問を持つ人もゼロではありません。しかし前橋市長をはじめとした自治体側は「子供や若い人の支援といった自治体の問題をふるさと納税で解決するという取り組みを広げることは重要だ」と考え、支援事業に「タイガーマスク運動支援プロジェクト」と命名し、寄付の使い道の一つとして定めました。
子供たちに何かしたいという思いが、ふるさと納税を活用した大きな支援事業となったのです。もちろん「支援といってもランドセルはいりません」という声も考慮し、プロジェクトの内容は「これから社会に出る子供の支援」や「若者の免許取得の援助」といった幅広いものとなっています。
子供の支援事業に力を入れるふるさと納税先
良農園の旬野菜ギフト(前橋市ふるさと納税)
子供支援事業に寄付を使っている市町村にふるさと納税をしても、通常通り返礼品を受け取ることができます。ただし、一部の自治体はふるさと納税者の手元に返礼品は届きません。寄付の使い道でふるさと納税を選ぶ時は「どこに返礼品が届くのか」「返礼品は出るのか」を確認の上で申し込んでいただけたらと思います。
例として、3つの市町村区についてご紹介しましょう。
・前橋市
前橋市は、お野菜やお肉の加工品が豊富です。特に季節野菜の詰め合わせや野菜ソムリエが厳選して育てた野菜などは、お子さんのご飯にぴったりの返礼品です。
「食育」という言葉が盛んに議論される時代です。美味しく栄養たっぷりの野菜をお子さんの食育に役立ててみてはいかがでしょう。子供支援事業に協力することにより、我が子の食育にもなるという素敵な循環です。
・佐賀県
佐賀県産のお米(佐賀県ふるさと納税)
前橋市と同じく、子供を支援するために独自のプロジェクトを立ち上げている自治体があります。佐賀県は「子ども救済システム」と銘打ち、ふるさと納税による寄付で、子供の貧困や虐待などに声なき声を上げている子供たちの支援をしています。
佐賀県のプロジェクトの素敵なところは、返礼品をふるさと納税者ではなく支援先の子供に届けることができることです。孤独や貧困、心の痛みというすぐ側にある問題の渦中にある子供たちに「あなたは一人じゃないよ。美味しいものを食べて元気を出して」「寄付も子供の支援に使ってくださいね」と語りかけるようなプロジェクトです。
・文京区
文京区では、区とNPO法人の官民一体で子供支援事業「こども宅食プロジェクト」を展開しています。経済状況により食生活に影響が出ている子供たちに食事を届けようというプロジェクトです。
宅配を用いることにより、それぞれの貧困家庭にどんな支援が必要でどんなことで困っているのかを判断して、子供たちへ適切な支援をすることも目的としています。こちらのプロジェクトへは寄付を最大限に活用するために返礼品無しとなっています。
寄付が子供という名の未来を創る助けに
ご紹介したふるさと納税で「タイガーマスク運動支援プロジェクト」などを指定して寄付された分については、子供をはじめとした若者の支援事業のために使われます。子供の支援事業とは、子育ての援助をはじめ、養護児童施設の子供の自立支援や食糧支援、若者が独り立ちするための手助けとなる運転免許の取得など幅広く使われています。
将来、日本を背負って立つ子供の支援とは何も現在背負うランドセルを送ることだけではありません。未来を背負って、「大人になった子供たちが幸せに笑って生きるために必要とすること」に使われているのです。
ふるさと納税は返礼品をもらうということがクローズアップされがちです。地場産業を活性化させるという意味では、返礼品を自治体が購入して経済を循環させることも確かに大切なことです。しかし、ふるさと納税の本質は、「返礼品をもらう」こと以上に、「未来を創る」「地域に住む人が笑顔になる」「日本中の人が、プロジェクトを通じてよりよい社会の実現に貢献できる」という意味を持った制度である点です。それを多くの人が感じているからこそ前橋市のプロジェクトは特に注目されたのではないでしょうか。ふるさとチョイスアワードへノミネートされたのも、まさにふるさと納税の精神を体現したプロジェクトだったからでしょう。
未来を創るって素敵だね。将来を担う子供の笑顔に繋がるプロジェクトは素敵だね。そんなふうに考えて、皆さんも「未来に繋がること」をふるさと納税からはじめてみてはいかがでしょうか。