ふるさと納税の寄付先を選ぶ際に、何を重要視していますか?多くの方は返礼品を重要視していると思います。しかし、それが高じて返礼品競争を生み出し、「応援したいふるさとに寄付する」というふるさと納税の目的を見失わせる事態も起こっています。全国で、そんな返礼品競争に疑問を持った自治体がいくつかあります。長岡京市をはじめいくつかの市は返礼品を廃止しました。今回は自治体が返礼品を廃止した理由、その結果、そして本来のふるさと納税の目的について解説しましょう。
返礼品をなくして寄付金をフル活用!
ふるさと納税の大きな魅力の一つである返礼品を廃止した自治体がいくつかあります。返礼品を取りやめた結果、寄付金額が下がっている自治体もありますが、大きな成果を残しているのが京都府の長岡京市です。2016年に返礼品を廃止しているにも関わらず、寄付金額はおよそ5倍以上に増加しました。
そもそも、長岡京市をはじめとする自治体はなぜ返礼品を廃止したのでしょうか?返礼品を取りやめた自治体に共通しているのは、高額な返礼品に疑問を持っているということです。2008年にスタートしたふるさと納税は、今では自治体の大きな税収源となっています。そのため、全国の自治体はより多くの税収を集めようと様々な工夫をしてきました。そして、現在問題となっているのが返礼品競争です。
豪華な返礼品を用意することで、多数の寄付が寄せられます。返礼品が豪華になればなるほど、全国から注目が集まるようになっています。この返礼品競争は多くの税収を集められるという一面がありますが、同時に寄付金を自治体の発展に100%活用できていないという面もあるのです。
当然ではありますが、返礼品は無料ではありません。各自治体は返礼品を購入する必要もありますし、返礼品を寄付者へ送る際の送料も負担しなければいけないのです。「寄付金が町の発展のために十分に使われていない」これが最大の問題です。
だからこそ、長岡京市をはじめとするいくつかの自治体は返礼品を廃止しました。返礼品の廃止は決してネガティブなものではありません。むしろ、寄付金を十分住民のために使えるようになったというポジティブなものです。
返礼品をなくして寄付金額5倍増!
返礼品を廃止したすべての自治体の寄付金額が減少したというわけではありません。京都府の長岡京市は返礼品を廃止したことによって、寄付金額が5倍も増額したのです。成功の秘密は、寄付金の使い道を限定して具体的にしたことでしょう。
寄付金全額を町の発展に使用できるようにするだけではなく、寄付者が使用用途を選べるようにしたのです。長岡京市は使用用途を以下3つに絞り込みました。
・京都西山再生プロジェクト
(長岡京市HP)
長岡京市の西側にある豊かな森林が西山。緑豊かな景観を作る西山ですが、様々な危機に直面しています。木々が成長し、森の中まで光がとおらない「暗い森」問題、増えすぎた鹿による「鹿の食害」問題、土砂崩れなどの災害リスクを高める「拡大竹林」問題など。
それらの問題を解決するために、長岡京市が建てたプロジェクトが京都西山再生プロジェクトです。具体的には不要木を伐採することで森の中に光が入るようにする、鹿対策にネットを設置する、苗木の植樹、そして草刈りなどを行います。
目標金額は800万円で、プロジェクト開始から半年で約110万円集まっています。まずは、寄付金を使用してクヌギやエノキの苗木の植樹が開始されます。
・スターライトイルミネーション in バンビオ
(長岡京市HP)
こちらは、イルミネーション事業です。市の玄関ともいえる長岡京駅前に個性的なイルミネーションを設置して、まちを活性化しようという取り組みです。冬になると、駅前のバンビオ公園広場が美しくライトアップされます。現在、長岡京市のシンボルである竹を使った竹行燈を設置する計画が進行中です。HPでは具体的に必要な金額が提示され、寄付を考えている人にとっては、よりわかりやすいプロジェクトになっています。
・こどもたちに本を贈ろうプロジェクト
(長岡京市HP)
本は子どもの想像力や表現力を豊かなものにします。このプロジェクトは、市内の小中学校の本の種類と量を増やそうという取り組みです。子どもたちにもっと多くの本に触れあってもらって、豊かな心を育んでもらいたいという想いの元、プロジェクトは立ち上がりました。
プロジェクト開始から半年で140万円以上の寄付が集まり、長岡第五小学校に図書300冊と国際感覚を育むことを目的に英語の絵本22冊が送られました。本を受け取った子どもたちからは笑みがこぼれ、お礼として子どもたちからメッセージと読んだ本の感想文集が届きます。
どのプロジェクトも開始したばかりですが、順調なスタートを切っています。
ふるさと納税の目的は自治体を応援すること
自治体の中には、返礼品を廃止しても寄付金が減らないどころか、増やすことができているところがあります。ふるさと納税の元々の目的は、「ふるさとを応援したい」という気持ちのもと寄付をすることです。
それがいつの間にか、税収を得るための返礼品競争となってしまいました。ふるさと納税の原点回帰を測った長岡京市。返礼品廃止を決定した際には、不安の声も出ましたが、見事に人々の共感を得ました。それは寄付金額5倍増という数字に裏付けられています。
また長岡京市には、寄付金とともに応援メッセージも届いたそうです。もちろん返礼品も素晴らしい制度です。その土地に行けなくても、その土地の魅力を感じられるというメリットがあります。しかし、返礼品第一の思考は本来の目的から外れてしまっています。返礼品目的ではなく、純粋にふるさとを応援したいから寄付をする。これが、ふるさと納税のあり方ではないでしょうか。
長岡京市をはじめとする返礼品を廃止した自治体には、頂いた寄付金を十分に町の発展に活用したいという想いがあります。返礼品廃止をしても長岡京市には多数の寄付金が集まり、まさにふるさと納税のあるべき姿を体現しています。しかし、必ずしも返礼品が悪いというわけではありません。最も大切なのは、応援したいふるさとに寄付をすること。あなたが応援したい自治体はどこでしょうか?