返礼品の内容で選ぶ人が多いふるさと納税。
しかし、最近では、寄付金の使い道がわかるクラウドファンディング形式で納税をする人が増えてきています。
また、2017年に総務省が各自治体へ、寄付金の使い道を具体的にするように通達したこともあり、自治体も住民と地域の発展などについて話し合う場を設け、住民からの意見を行政に活かそうとしています。
今回はふるさと納税の使い道として、住民のアイデアが採用されたエピソードについてご紹介します。
少子化・過疎化が進む町と住民が「未来づくり」のために団結
舞台は1970年から人口が減少し続け、少子化・過疎化が進む町、鹿児島県錦江町。
2060年には人口が2.856人まで減少すると予測されているこの町は、2016年度に地方創生事業の戦略の抜本的な見直しを実施。
新たに「未来づくり」を掲げました。
そこで生まれたのは「子や孫たちのために希望あふれる未来を作ってつなげていこう」というコンセプトのもとスタートしたのが「『MIRAI』づくりプロジェクト」です。
同プロジェクトは、希望ある未来に向かって、移住者や子どもたちを含めた住民全員が思うようにチャレンジでき、住んでいる町を誇れるようになるのが目標です。
そして、プロジェクトの一環として、住民や町内勤務・通学者などを対象にふるさと納税の未来志向的な使い方のアイデアを公募。
住民によるアイデアが採用・実現されることになりました。
小児科不在の町でも安心して子育てできるように
錦江町には小児科がなく、子どもが体調を崩したときには近隣の市町村にある小児科を受診する必要がありました。
子育て世代にとっては、移動にかかる交通費や時間は大きな負担。
そこで住民から、安心して子育てができるように、小児科誘致や遠隔診療・相談ができる仕組みを導入してはどうかという提言がされました。
錦江町はこの意見を採用。
スマートフォンで小児科専門医に相談できる遠隔健康医療相談の導入に向けて動き出し、ふるさと納税の寄付金を実証実験と導入費用に還元。
住民の思いから生まれた遠隔健康医療相談は、平成30年6月1日より実証実験がスタートします。
同じ問題を抱える自治体との共同実証実験を開始
錦江町が導入するのは「小児科オンライン」という、既に自治体や法人向けに稼働しているサービス。
実証実験は、同じく町内に小児科が不在である埼玉県横瀬町と共同で行われます。
18〜22時の夜間に現役小児科医へ相談できる
小児科を含め、ほとんどのクリニックは夜間診療を行っていませんが、小児科オンラインでは、18〜22時の時間帯に10分間、現役の小児科専門医師にリアルタイムで相談可能。
相談方法は電話か、LINEのメッセージチャット・音声通話・ビデオ通話から選べます。
受診の必要性をはじめ、対応方法が自宅にいながら聞けますし、子育てに対する日頃の不安も相談できます。
医療相談なので、診断や処方などの医療行為はできませんが、子どもが体調を崩すなど不安な時に医師に相談できるというのは、保護者にとっては嬉しいサービスですね。
錦江町はこのサービスを導入することで子育て世代に安心感を与えられるとともに、町の保健師の負担が緩和され、ハイレベルの育児支援体制が維持できると考えています。
今後は「日本一子育てしやすい町」を目指すそうです。
各地で住民と行政が共に「まち」づくりのために協働
錦江町以外にもさまざまな自治体で百人委員会などが設置され、住民と行政がともに自分たちの住む「まち」をより良くするためのアイデアを出し合っています。
また、中にはTwitterやFacebook、InstagramなどのSNSを活用し、住民と協働した広報活動で認知度をあげ、ふるさと納税の寄付額を目指そうという自治体もあります。
このように住民と自体とが協働する気運が高まっている昨今では、医療サービス以外にも、住民のアイデアがふるさと納税の使い道に採用されるケースが期待できますね。